FRANCK MULLER GENEVE
J E A N - L O U P
G L É N A T
D E S I G N E R

JEAN-LOUP GLÉNAT DESIGNER

2010年1月、デザイナーとして入社し、14年目です。担当したモデルの数は多いのですが、なかでも注目して欲しいのは、ヴァンガードとグランド カーベックス“CX”です。もともと、産業デザイナーで、建築なども手がけ、若い頃に、時計を手がけるデザインスタジオに入社し、いろいろなブランドの、いろいろな腕時計を担当。
やがて、コンプリケーションがもっているディテールを追求したいと考えたとき、ヴァルタン シルマケスとの出会いがありました。

JEAN-LOUP GLÉNAT Sign
Jean-Loup Glénat-Designer
ウォッチランドでは、来訪希望者は大歓迎。ぜひ、日本の愛好家の方たちから貴重な意見を伺いたい。

「白い紙にデザインを描くより、トノウ カーベックスをベースに進化形を描くことのほうが、より難しいと感じています」

どれほど、完成度が高いのか。デザイナーとしてウォッチランドに入社以来、つねに思考から離れなかったのは、やはりトノウ カーベックスです。フランク ミュラーらしいオリジナリティに溢れ、美しさばかりか、明確に存在を主張するケースデザインには、敬意とともに接してきました。デザイン担当としては、白い紙に新たなデザインを描くことよりも、トノウ カーベックスをベースに進化形を描くことのほうが、より難しいと感じてしまいます。それでも、敢えて、進化させたモデルに挑み続けています。グランド カーベックスは、トノウ カーベックスの進化型です。まず、世代を超越しながら、カーベックスらしさを感じさせるダイナミックなモデルにする必要がありました。そこで、ガラス面積を大きくすることにしました。しかも、ガラスを外へ向けて広げるようなイメージで、ラグのところまで拡大。周囲に存在するスクリーンを観察していて、閃きました。液晶テレビとか、スマートフォンとか、大きなスクリーンが現代を物語っていることを知らされました。この発想のおかげで、内部構造から見直したケースデザイン、ギョウシェ彫りを施した文字盤、ビザン数字を立体化したインデックスにまで影響を与えています。

「デザインは、時計師やエンジニアとともに、外交官のように話し合い、まとめていくことが大切です」

日本の愛好家の方は、フランク ミュラーのクラシックな雰囲気に魅力を感じ、大切にしています。これは想像なのですが、日本の文化は、トラディショナルな部分とアヴァンギャルドな部分の両方を備え、調和させているのではないでしょうか。ブランドとしてのフランク ミュラーも、絶対に遺していかなけれいけないのは、伝統と進化が共存したトノウ型のケースです。ヴァルタンに提案したヴァンガードのコンセプトが、具体的な例です。よりダイナミックに、躍動する世界のなかでどう変化させていくのか。若い愛好家にも魅力的であり、新しいドアを開けることができるようなモデルにしなければいけません。全体的にボリュームを与え、曲線とインデックスに表現力をもたせ、人間工学的にもフィットさせることを目指しました。おかげで、文字盤を眺め、ちょっと袖口などから出ているシルエットを確認すれば、すぐにヴァンガードだと理解できるはずです。デザインを学んでいた頃は、デッサンが命だと思っていましたが、現実は、初心を守り、いちばん最初につくりたいと考えていたものに近づけ、仕上げていくことだと気づきました。時計師やエンジニアとノウハウを出し合い、外交官のように、すべての可能性について丁寧に話し合いながら進めていくことも大切です。