THE PASSION FOR TOURBILLON
FRANCK MULLER

Challenge For

Expansion

拡張化への挑戦

グランドコンプリケーションの先駆者、フランク ミュラー。複雑機構を組み合わせるうえで核となるトゥールビヨンにどこまで拡張性を与えられるのか。1980年代後半から、妥協なく挑み続ける複雑機構への取り組みの結実「エテルニタス メガ4」に、ブランドの真髄が見て取れる。

エテルニタス メガ4

8888TGSCCRQPSE OG

18KWG 61×42.1㎜ 自動巻き

¥567,600,000(税込)

トゥールビヨンの拡張性、
そこに限界はあるのか?

複数の機構を載せるグランドコンプリケーションにおいて、トゥールビヨンの拡張性という視点を欠くことはできない。理由は、それこそが時計師たちの誇りと情熱が注がれた「究極の挑戦」といえるものだからだ。構造自体シンプルなトゥールビヨンは、主要な要素がキャリッジ周辺に集結する、その省スペース性こそが、まさにフランク ミュラーの挑戦を支える要となっている。

2000年代に入り、フランク ミュラーが先陣を切って開発したトゥールビヨンをはじめとする複雑機構に他社が追随。工業技術の進化も相まって時計界はかつてない盛り上がりを見せた。
具体的には、2001年に初の自社製キャリバーとなる「FM2001-2」を発表。フランク ミュラーの顔として革新性を象徴するフライング式だが、ブリッジを持たない設計が、スペース活用の点で有効だと考えられた。
「最も困難だったのが、トノウ カーベックスケースに収めることです」と設計師が吐露するように、省スペース性を備えたフライング トゥールビヨンの利点を活かしつつ、トノウ型ケースに美的感性を損なわずに収める必要があった。

そして、ブランドのアイデンティティを生かしながら、フランク ミュラーは、多くの機構を複合させたトゥールビヨンウォッチを次々に発表していく。
目覚ましいのは、1から5まで全5型登場させた「エテルニタス」シリーズだ。この時計は2006年に発表されたのだが、併載している機構によって5段階に分けられている。最も複雑と言われる「エテルニタス 5」では、1000年調整不要なエターナルカレンダーや、スプリットセコンドクロノグラフなどを載せ、自動巻き機構にしている。

それに驚く間もなく、翌2007年に登場したのが、「エテルニタス メガ4」である。これは、フライング トゥールビヨンやエターナルカレンダー、スプリットセコンドクロノグラフなど計36もの機構を載せており、世界記録を塗り替えた超話題作だ。限られたスペースに驚愕の機能を盛り込みながら、同時に美的感性をも巧みに表現。まさに、フランク ミュラーがトゥールビヨンに懸ける情熱と矜持が生み出した偉業である。

通常、トゥールビヨンには強トルクが求められるが、「エテルニタス メガ4」では、想像を超える多機能化を実現するため、香箱を輪列用とソヌリ用に分けるという発想でこの課題を解決した。
「追加機能に合わせて、主ゼンマイの設定も見直さざるを得ませんでした。熱処理や厚み調整を施しながら試行錯誤するという途轍もない挑戦でした」とプロトタイピストは、当時を述懐する。彼に「生涯で最も難しかったモデルは?」と問うと、「答えはお分かりでしょう?」と即答するほどで、本作完成までの労苦は推して知るべし、であろう。

「エテルニタス メガ4」は、いわば“コンセプトウォッチ”で、基本はワンオフ生産。最終的なモデル製造に向けて、時計師が組み立てやすいよう細部にわたる改良を2、3年かけて施していく。
「モジュールの組み上げではなく、このモデルに対してそれぞれのパーツを一から設計していく点で非常に時間がかかります。問題のある1箇所を直せば済むという単純なものではないのです」

通常の時計が増改築自在な一軒家を建てることだとするなら、トゥールビヨンは同じ敷地内に、複雑にして荘厳な五重塔を建てるようなものだ。

36におよぶ機構を複合させたハイコンプリケーションウォッチ「エテルニタス メガ4」のムーブメントは、計3階層の構造となっている。

限られたスペースに膨大な機能を追加し、必要なエネルギー供給も確保した本作は、「マスター オブ コンプリケーション」の金字塔。世界的な名声を得るのも当然だ。スマートフォンならば、容量が許す限りアプリを増やせば機能を拡張できるが、グランドコンプリケーションでは、そう容易くはない。その点で「エテルニタス メガ4」は、トゥールビヨンの拡張性を究極の形で実現した。

もちろん、技術の可能性は無限だ。例えば、世界初のトリプルジャンピング機構を搭載した「マスター ジャンパー」のような時計をトゥールビヨン化するのもひとつの挑戦の姿である。ただし、「挑むには命がけですね(笑)」とプロトタイピストが冗談めかすほど、想像を絶する試練が待ち受けているだろう。

トゥールビヨンの進化とは不可能を可能にする歩みそのものだ。フランク ミュラーがそれを証明している。そして、人の想像力が無限であるように、フランク ミュラーの進化にも終わりはない。

スプリットセコンドクロノグラフを配置したケースバック側。トゥールビヨン機構の裏に、プラチナ製のマイクロローターを搭載し、美的でありながらも簡潔に仕上げられている。

風防側の第3階層。1000年調整不要なエターナルカレンダーをはじめ、サン&ムーンやパワーリザーブなど、表示に関わる複数の機構が載っている。

ミニッツ・リピーターやグランドソヌリといったサウンド機構を中間階層に収めている。