ようやく完成したタイムピースが迎える最後のハードルが検品だ。これまでの工程でその都度、精度や品質、仕上がりは繰り返し確認されているものの、専任者によるチェックは別格といえる。ここにいたるまでの多くの作り手の思いを考えると、視線はより厳しくなる。もし1点でも見逃せばその努力も水泡に帰してしまうからだ。そして温かくも厳格な検査をクリアし、いよいよ出荷へ。
検品の部署には、ストラップの付けられていないケースの状態で持ち込まれる。それを外装の小傷や打痕、くすみなどがないかを入念にチェック。さらに文字盤やインデックス、針などの美観に加え、埃などの混入も確認。そしてリュウズの操作や運針、カレンダーの日捲りといった基本機能から、専用計測器を用いて精度やテンプの振り角を確認する。これらをすべて終えたものが出荷の工程に送られる。
出荷前に再び外観のチェックを行う。細心の注意を払っていてもここで不具合が発見されることも少なくない。ダブルチェックならぬマルチチェックだ。もし問題があればバフ研磨を施し、細部は綿棒で仕上げ、完了後にケースバックに保護シールを貼る。そしていよいよストラップと尾錠を取り付ける。この時も工具が滑ってケースなどを傷つけないよう神経を注ぐ。最終確認を済ませたら、ケース本体にラッピングを施し、世界各国へ出荷される。
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