未来を切り開く、
複雑時計へのあくなき挑戦
人は彼を“時の哲学者”と呼ぶ。
フランク ミュラーの手から生まれる時計は、
過去から未来へと時を超え、精緻でありながらロマンチシズムに満ちる。
唯一無二の魅力は、深遠なる時の世界へと誘うのである。
数多ある時計には、時計師の名を冠したブランドも少なくない。だが本人が現存し、いまも時計作りを統括するブランドは限られる。そのひとつがフランク ミュラーだ。今年ブランド創業30周年を迎え、高い知名度とひと目でそれとわかる個性は、時計愛好家ばかりでなく、男女問わず幅広く支持されている。だがその萌芽はすでにブランド誕生前夜にあったといえるだろう。
優秀な成績を修め、時計学校を首席で卒業した若きフランク ミュラーは、1980年代にまず時計の修復師として経験を積む。歴史的な名作時計に宿る先達の技や情熱、息遣いに触れ、その時空を超えた薫陶によって自身が進むべき時計師の道を定めた。こうして培った豊富な技術と知識、独創的なアイディアを生かし、独立時計師としてオリジナルの時計製作へと歩み出したのだった。
トノウ カーベックスに、クロノグラフと各月の第1日目における太陽の南中時(正午)と平均太陽時との差を表す均時差付きパーペチュアルカレンダーを装備する。1994年発表モデル。
トノウ カーベックス レトログラード エクエーション パーペチュアルカレンダー クロノグラフ:6850QPE 5N
18KPG 47×34㎜ 自動巻き
¥10,780,000
フランク ミュラーは、限られた顧客に向け、世界初の時計機構を次々と生み出していった。卓越した技術と既成概念や常識に縛られない発想は“黄金の腕を持った時計師”とさえ讃えられ、従来の時計に飽き足らないコレクターを満足させた。独自の美学を追求する時計作りの哲学をさらに研鑽し、1992年いよいよ機は熟し、自らのブランドを立ち上げたのである。
その手から生まれる複雑時計からは、伝統的な時計技術に根ざしつつ、現代の息吹を注ぐフランク ミュラーらしさが伝わってくる。右頁の時計は、指針での表示に加え、打刻で時間を知らせるミニッツリピーターに、月の大小に関わらず常に正確な暦を自動表示する永久カレンダー、ラップタイムを任意で計測できるスプリットセコンド クロノグラフを統合する。いずれも懐中時計の時代に発明された機構だが、それを網羅し、わずか4cm弱のケースに搭載し、現代に蘇らせたのはまさにフランク ミュラーの本領発揮だ。
1986年に従来の懐中時計から腕時計で実現して以来、ブランドの代名詞となったトゥールビヨンをパーペチュアルカレンダーと統合し、代表モデルの「ロングアイランド」に搭載する。
ロングアイランド パーペチュアルカレンダー トゥールビヨン:1350TQPENG PT
PT 48×34.5㎜ 手巻き
¥34,100,000
フランク ミュラーを唯一無二とするもの。それは軽やかに対極を越境し、自在に横断するスタイルだ。クラシックとモダン、複雑とシンプル、機械と生命感、リアルとファンタジー。その二律背反を、設計者であり、組み立ても行うという時計師としても稀有な両面のスキルをもって具現化する。それも技術をひけらかすのではなく、根底には時に対する畏敬の念であり、無限の探求心がある。本人はこう語っている。
「時というものは無限でありながら、自分たちの生きている時間は有限です。時間を完全に掌握することはできませんが、この無限と有限の時間のぎりぎりの緊張の上に、素晴らしい世界が展開しているのです」
こうして時を俯瞰することで、自身の哲学を時計というカタチに昇華する。これを手にすることは、何ものにも代えがたい価値をまさに掌中に収めることであり、その針の刻む時間は人生をより豊かに演出するだろう。フランク ミュラーの時計はそんな思いに応えてくれるのだ。
1992年に発表された超複雑時計を2015年に復刻。前面に時分のインダイアルとスプリットセコンド クロノグラフを備え、裏面ではタキ/テレ/パルスの3計測を同時表示する。
ラウンド スプリットセコンド ダブルフェイス クロノグラフ:7000CCRDFCANJ 5N
18KPG 39㎜ 自動巻き
¥7,920,000
ラウンド ミニッツリピーター レトログラード エクエーション パーペチュアルカレンダー クロノグラフ(コンキスタドール)
1997年発表モデル。搭載する複雑機能の数にも圧倒されるが、レトログラード運針を始め、針やインデックスには多彩なデザインをあしらい、優れた視認性と美しい調和を両立する。
RMQPCR PT:39㎜/手巻き
¥71,500,000